2012年9月19日水曜日

緑内障の新しい治療法の開発にもつながるか


視神経:細胞死を抑制 都医学総合研などマウス実験

毎日新聞 2012年09月19日 07時46分
 外傷による衝撃などで視神経が損傷した場合、薬剤を投与して根元の細胞体が死ぬのを抑制することに、東京都医学総合研究所と徳島大などの研究チームがマウスの実験で成功した。視神経の細胞体は傷つくと再生することがなく、視力低下や失明を起こす。同様に視神経の細胞体が死ぬことで発症し、国内で失明の最多の原因となっている緑内障の治療法の開発にもつながると期待される。成果は、14日付の英科学誌電子版で発表した。
 人間やマウスの目は、網膜表面にある細胞体から視神経が出て脳まで伸び、視覚情報を伝えている。この細胞体が大量に死ぬと視覚情報が脳に伝わらない。
 同研究所の原田高幸プロジェクトリーダー(眼科学)らは、細胞死を誘導するASK1や、連動して働くp38という遺伝子が、視神経の損傷後に過剰に活性化し、細胞体を減少させていると推測して研究。ASK1がないマウスを人工的につくり、視神経をわざと傷つけたところ、2週間後、細胞体の減少量は通常のマウスに比べて半分以下にとどまっていた。また、視神経を損傷させた直後、p38の働きを阻害する薬剤を眼球に注射したところ、やはり細胞体の減少量が抑えられた。これらから、視神経が損傷した後でも、ASK1やp38の活性を抑える薬剤を投与することで、細胞体の死を抑えることができると結論づけた。
 同様の遺伝子はヒトにも存在し、原田さんらは「薬剤で細胞体を保護した後、傷付いた神経部分を再生できれば、視覚機能を回復させる新たな治療法になる」としている。【須田桃子】

だそうです。
損傷したあとでも細胞死を抑制できる、というところがいいですね。緑内障の進行防止に、眼圧下降以外の治療法が加わるかもしれません。

2012年9月3日月曜日

ついに網膜色素変性症に新しい治療法?


難病に初の遺伝子治療 来春にも九州大病院

2012年8月30日 共同通信社 カテゴリ: 眼科疾患投薬に関わる問題その他
 九州大病院(福岡市)は29日、光を感じる網膜の視細胞が徐々に失われ、失明する恐れのある難病、網膜色素変性(色変)の患者に、日本初となる遺伝子治療の臨床研究を来春にも開始すると発表した。
 治療を計画した石橋達朗(いしばし・たつろう)教授によると、色変は約5千人に1人の割合で起こる遺伝性の病気。約50種の遺伝子異常が原因だが、これまで有効な治療法はなかった。
 石橋教授らは、視細胞を保護するタンパク質の遺伝子を組み込んだウイルスベクター(遺伝子の運び役)を患者の網膜に注射することで、視細胞の喪失を防ぎ、視力の低下を遅らせる考え。
 まず低濃度のベクター溶液を患者5人に注射し、異常がなければ、治療に有効な濃度の溶液を患者15人に投与してそれぞれ2年間、問題がないか調べる。計画は7月、厚生労働省の厚生科学審議会の部会で承認された。
 治療には、世界で初めてサル由来のウイルスベクターを使用。ベクターは茨城県つくば市のベンチャー企業が開発した。
 石橋教授は「安全性が確認されれば、治療薬の開発につながり、失明防止に役立つ」と話している

だそうです。

これまでは網膜色素変性症にたいしては、ほとんど何ら効果的な治療法もありませんでした。

こういった遺伝子治療が研究されるのは当然の帰結なのですが、問題は実際に神経保護効果が現れるのかです。

効果がじっさいにみられることを期待したいと思います。